甲府市荒川沿いに佇む野口建設は、従業員2名、専属大工3名と小さな建設会社でありながら、年間工数120~130を誇る大手に引けを取らない実力を備えています。木造建築だけにとどまらず、コンクリートや鉄骨など各構造体の建築経験を活かした家づくりには、地元の人々を中心に多くの信頼が集まっているのです。
小規模から大規模まで。経験の積み重ねから得た野口建設の強み
創立からこれまでの経緯をお聞かせください。
1981年に、先代である父が公共工事やビルなどを扱う県内のゼネコンを卒業して野口建設を創業しました。ちょうどバブルが始まった頃で、世間でも起業をする人が多く一見すると華やかなイメージがありましたが、実際は掘っ立て小屋のような加工場を建てて大工さん3~4人と共に始め、それなりに苦労する父の姿も見てきました。その後、私自身は建築関係の大学へ進学し、建築の基礎から構造、設計など総合的に学びました。当時はバブル真っ只中で建築業や貴金属業の勢いがありましたし、建築しか見てこなかった環境も手伝って決めた進路でした。卒業後は県内のゼネコンで2年間、ホテルの新築やマンション、鉄骨の店舗、木造住宅など幅広い経験を経て、家業に入りました。それからも、県内のゼネコンとJVを組んでマンションや工場といったコンクリート造や鉄骨造から木造住宅まで、さまざまな構造体の経験を積んできたおかげで“わからないものはない”と胸を張って言えるのが弊社の強みですね。HPもない小さな会社ですが、そんな強みを活かしながら、お施主さんの希望や生活スタイルに合わせた提案ができていると自負しています。
お施主様の想いを紡ぐリフォームならではの達成感
新築よりもリフォームを数多く手がけていらっしゃいますが、それはなぜですか。
単純に、リフォームが好きなんです笑。弊社では、年間大小合わせて120~130件ほどの工事を行いますが、そのうち新築は1~2棟ほどで、ほとんどがリフォームや修繕です。リフォームは、構造体がすでに出来上がっている建物に手を入れるので力量が試され、そこに面白さがあるんです。ビフォー・アフターの姿を見ることは、一から作り上げる新築とは違った魅力がありますし、仕上がったときのお施主さんの表情が本当にいいんです。住まいに思い入れがあるお施主さんが多いですから。
3年程前に、木造の古い家を外壁もはがしてスケルトンにした工事がありました。本来であれば建て替えを勧めるような状態だったのですが、奥さんの思い入れが強く改修を望まれていたので、柱と梁だけの状態にして基礎も補強する大規模リフォームとなりました。また、知り合いの歯科病院の先生の自宅は、敷地的な問題や解体・撤去作業でかかる費用面も考慮したリフォームを行いました。築40年くらいのコンクリート造の建物でしたので、コンクリートだけにして新築と変わらないような工事を施しました。どちらも大がかりな工事で大変でしたが、楽しくやらさていただきました。住んでいる方の想いを汲んで、新たな要望を組み込みながらきれいに直していくのは、本当にやりがいを感じます。
どんな要望でも応えられる道を探す信念と職人との絆が、お施主様の満足度に繋がる
社長自らデザインをされているとのことですが、設計時に気を付けていることや大切にされていることは何ですか。
弊社の理念は、“お客様に寄り添い、共に納得のいく建物を作り出す”ことです。お施主さんの使い勝手や住み心地を重視して、設計側からの無理強いはしないように意識しています。やはり、自分一人で考えていると偏ったデザインになりがちなので、設計仲間に相談をしたり、最近ではYouTubeなどでも勉強になる情報が流れているので、積極的に周囲の意見は取り入れています。副次的に、そこから繋がりが生まれて新たな仕事が舞い込んでくることもあります。
リフォームでいうと、構造体には絶対に触ってはいけない部分もあるので、それらに留意しながらもお施主さんの希望にはできる限り応えていきます。間取りを変えたい、部屋を広くしたいといった難しい要望では、必要に応じて構造計算もし、しっかりと想いを汲んでいくことで、リフォームであっても理想の空間を作ることは可能ですから、気軽にこんな風にしたいと相談いただければと思います。
何より大切なことは、安心して長く住めることです。そのためには、お施主さんとの信頼関係だけでなく、各業種の職人さんと建築会社との信頼関係も欠かせません。弊社では何十年も同じ職人さんで現場を回しているので、互いに意見が言い合える間柄ですし、真摯に仕事に向き合う人に仕事を依頼しています。これらが良い家づくりの条件だと思います。職人さんの中には人生の先輩もいますし、私自身教えられることは多いです。今後もそんな職人さんたちと協力しながら仕事に向き合っていければと思っています。共に老いるまで笑。