住宅の断熱施工の種類、断熱性能について

2023.08.30
住宅の断熱施工の種類、断熱性能について

断熱と聞くと冬をイメージしがちですが、実は夏の過ごしやすさにも大きく関係します。断熱性能の高い家は、冬は冷えにくく、夏は暑くなりにくくなるので、一年を通して過ごしやすくなるメリットがあるのです。

断熱施工(断熱工事)とは、断熱を高める工事、住居外部から住居内に熱が奪われたり与えられたりしにくくする工事全般をいいます。家の壁や床、屋根の断熱工事、配管やボイラー工事、床暖房施工がこれにあたり、そこでは断熱材(保温材)が重要な役割を果たします。

断熱工法

断熱工法とは、断熱施工の種類を指します。木造住宅の断熱工法の場合、「充填断熱」「外張断熱」「付加断熱」に大別できます。

充填断熱工法(内断熱とも)

充填断熱工法とはグラスウールなどの断熱材で家の壁の中やなど構造部材間に充填する工法です。昔から使われている方法です。発泡吹付ウレタンなどもあります。

外張断熱工法(外断熱とも)

外張り断熱工法とはウレタンフォームやポリスチレンフォームなどの断熱材で家の材(躯体)の外側を面で覆う工法です。施工費用は内断熱より高い外断熱ですが、断熱性能が内断熱より高いため、将来的には光熱費を削減できるとされます。

付加断熱

充填断熱と外張断熱の両方を(必要に応じ部分的に)施工するW断熱、いいとこどりの断熱工法です。柱間に設置された断熱材(内断熱)とその外側にも断熱材(外断熱)が施工されます。新しい断熱工法で、寒冷地で採用されるケースが増えています。

いわゆるZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス、年間の一次エネルギー消費量の収支がゼロになることを目指す住宅)など高断熱仕様を求められる住宅には、この付加断熱が採用されることが多いです。

断熱性能

住宅における断熱とは、外気の熱が家の中の熱と極力熱交換しないこと、熱交換できる場所が断たれていることを指します。断熱性能とは、その能力の程度を指標にしたものです。

壁・屋根・基礎の断熱性が高いことはもちろん、窓・サッシの断熱性が高いこと、C値が低いこと、換気システムの性能が高いことなどが総合的に断熱性能に関わってきます。

C値

C値(相当隙間面積)とは気密性能を表す指標で、家全体にあるすき間の面積(cm2)を延床面積(m2)で割った値。C値は小さいほど気密性が高いことになります。

詳しくはこちらの記事もご覧下さい。

断熱材

断熱材とは、室外と室内で熱の交換が起こりにくくするために施工する材料のことです。壁や屋根、床下など外気に触れる部分に設置します。

具体的には、グラスウールやロックウール、ポリスチレンフォーム、ウレタンフォームなど、熱が伝わりにくい素材が使われます。高い断熱性を実現するには、家の内部にいかに断熱材を張り巡らすかがポイントとなりますが、従来の上記素材に加え、最近は屋根や壁全体に発泡性ウレタンを直接吹きつけて膨らます技術も登場しました。

床下に貼られるポリスチレンフォームの断熱材(青色部分)

グラスウール

グラスウールは、ガラスを溶かし繊維状に加工して綿にしたもので、昔から断熱材として使われる部材です。断熱性が高く、低コストで、耐火性、耐熱性、耐久性が高い素材です。

ロックウール

ロックウールは、鉱物(天然岩石、高炉スラグなど)を高温で溶かして繊維状に加工して綿にしたもので、グラスウールと同じく低コストで、耐火性、耐熱性、耐久性に優れた素材です。

ポリスチレンフォーム

ポリスチレンフォームは、プラスチック系の断熱材で、熱伝導率が低く薄い施工でも優れた断熱性を発揮します。発泡プラスチック系の断熱材としては住宅建築では最も一般的に使われています。

ウレタンフォーム

ウレタンフォームは、ポリウレタン樹脂の断熱材のことで、 断熱性能や遮音性、耐水性が高いのが特徴です。

また、発泡ウレタンを現場で吹き付ける新しい施工方法も登場し、全館空調など高い断熱性能を求められるシーンで多く使われています。

高気密住宅

気密性の高い家を指します。高気密高断熱住宅と認定されることで、受けられる補助金制度もあります。

具体的にはC値によって、高気密住宅であるかどうかが判断され、C値1.0cm2/m2以下であれば、高い気密性を有しているとされます。平均的な延べ床面積なら、家のすき間が『ハガキ0.8枚分』程度の大きさとなります。

全館空調

季節を問わず低電力で空調して家の中の温度を適温に保ち、どの部屋もシームレスに快適が維持されるシステムのことです。近年注目されている住宅施工です。

断熱性と気密性を高め、エアコンで冷やした(or 暖めた)空気を効率よく利用するシステムです。

C値は0.5cm2/m2以下が望まれます。平均的な延べ床面積なら、家のすき間が『名刺一枚分』程度の大きさです。

以前の解説記事『全館空調とは?』もご参考ください。

「Z空調」(日本ハウジングソリューション)を取り入れたお宅へ伺い、施主様に住み心地をインタビューした動画も公開していますので、併せてご参考下さい。

以上、「住宅の断熱施工の種類、断熱性能について」でした。

理想の家づくりを叶えるためには、デザインやインテリア、間取りを考えますが、住み心地に関わる『断熱』も家づくりの大事な要素です。断熱施工はあとから簡単に変えられるものではないので、新築をお考えの方は断熱施工についても一定の理解を持っているとよいでしょう。